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鳩摩羅什の十如実相の意訳について考察する。
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資料@
原典語訳 岩本裕による口語訳出
「如来こそ如来の教えを教示しよう。
如来は個々の事象を知っており、如来こそ、あらゆる現象を教示することさえできるのだし、如来こそ、あらゆる現象を正に知っているのだ。
すなわち、
それらの現象が何であるか、
それらの現象がどのようなものであるか、
それらの現象がいかなるものであるか、
それらの現象がいかなる特徴をもっているのか、
それらの現象がいかなる本質を持つか、
ということである。
それらの現象が何であり、
どのようなものであり、
いかなるものに似ており、
いかなる特徴があり、
いかなる本質をもっているか
ということは、如来だけが知っているのだ。
如来こそ、これらの諸現象の明白な目撃者なのだ」
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資料A
鳩摩羅什訳 妙法蓮華経
「仏の成就(じょうじゅ)せる所は、第一の希有(けう)なる難解(なんげ)の法にして、唯(ただ)、仏と仏のみ、乃(すなわ)ち能(よ)く諸法の実相を究(きわ)め尽くせばなり。
謂(い)う所は、
諸法の是の如き相と、
是の如き性、
是の如き体、
是の如き力、
是の如き作、
是の如き因、
是の如き縁、
是の如き果、
是の如き報、
是の如き本末究竟等なり」
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大石寺版 妙法蓮華経
仏の成就したまえる所は、第一希有難解の法なり。唯仏と仏とのみ、乃し能く諸法の実相を究尽したまえり。
所謂諸法の如是相、如是性、如是体、如是力、如是作、如是因、如是縁、如是果、如是報、如是本末究竟等なり。
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資料B
鳩摩羅什以外の漢訳
「何等法・
云何法・
何以法・
何相法・
何体法」
(法華論より、これを五科法という)
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資料C
『大智度論』巻32
「復(ま)た次に、一一の法に九種有り。
一には 体 有り。
二には各各 法 有り、眼・耳は、同じく四大の造なりと雖(いえど)も、而(しか)も眼のみ独り能く見、耳には見る功なきが如し。
又火は熱を以て法と為し、而して潤おすこと能わざるが如し。
三には諸法各の 力 有り、火は焼くことを以て力と為し、水は潤すことを以て力と為すが如し。
四には諸法は各の自ら 因 有り。
五には諸法は各の自ら 縁 有り。
六には諸法は各の自ら 果 有り。
七には諸法は各の自ら 性 有り。
八には諸法は各の 限礙 有り。
九には諸法は各の 開通の方便 有り。
諸法の生ずる時は、体及び余の法は凡て九事有り。」
大智度論の「体・法(作)・力・因・縁・果(果・報)・性・限礙(相)・開通方便(本末究竟等)」などの九種法を変形展開し、十如是としたと推定されている。
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資料D
『大智度論』巻24
「仏は是の衆生の種種の性相は、所謂趣向する所に随って、是くの如く偏に多くを知りたまう。
如是貴。
如是深心事。
如是欲。
如是業。
如是行。
如是煩悩。
如是礼法。
如是定。
如是威儀。
如是知。
如是見。
如是憶想分別。」
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★ 考察
鳩摩羅什は大智度論の深い法義を以って原本を以下のように意訳したのではないか。
資料@ 原本 口語訳 | 大智度論 資料C | 鳩摩羅什訳 資料A | 石飛道子氏説を基に考察 | ||
如来は個々の事象を知っており、 如来こそ、あらゆる現象を教示することさえできるのだし、 如来こそ、あらゆる現象を正に知っているのだ。 |
仏の成就したまえる所は、第一希有難解の法なり。 唯仏と仏とのみ、乃し能く諸法の実相を究尽したまえり。 |
プラティヤクシャ↓ | |||
それらの現象が何であるか | 体 | 体 | 直接知覚できる事象 | 相 | |
それらの現象がどのようなものであるか | 因・縁・果 | 因 縁 果 報 | 報 | ||
それらの現象がいかなるものであるか、 | 限礙 | 相 | 縁 | ||
それらの現象がいかなる特徴をもっているのか、 | 性・法・力 | 性 作 力 | 力 | ||
それらの現象がいかなる本質を持つか、 | 開通の方便 | 本末究竟等 | 本末究竟等 | ||
ということである。 | |||||
それらの現象が何であり | 如来だけが 見ることができる事象 |
果 | |||
どのようなものであり | 性 | ||||
いかなるものに似ており | 作 | ||||
いかなる特徴があり | 因 | ||||
いかなる本質をもっているか | 体 | ||||
ということは、如来だけが知っているのだ。 如来こそ、これらの諸現象の明白な目撃者なのだ |
アパロークシャ↑ |