●無間地獄
▲第八に大阿鼻(だいあび)地獄とは、又は無間(むけん)地獄と申すなり。
此の地獄の香(か)のくさゝを人か(嗅)ぐならば、四天下(してんげ)・欲界・六天の天人皆し(死)ゝなん。
若し仏此の地獄の苦を具(つぶさ)に説かせ給はゞ、人聴きて血をはいて死すべき故に、くわしく仏説き給はずとみへたり。(顕謗法抄   弘長二年  四一歳 278)

▲我は是汝が父の烏竜(おりょう)なり、仏法を謗ぜし故に舌八つにさけ、五根より血を出だし、頭七分に破れて無間(むけん)地獄に堕ちぬ。彼の臨終の大苦をこそ堪忍(かんにん)すべしともおぼへざりしに、無間の苦は尚百千億倍なり。人間にして鈍刀をもて爪をはなち、鋸(のこぎり)をもて頚(くび)をきられ、炭火の上を歩(あゆ)ばせ、棘(いばら)にこめられなんどせし人の苦を、此の苦にたとへ(譬)ばかず(数)ならず。如何してか我が子に告げんと思ひしかどもかな(叶)はず。(法蓮抄 建治元年四月  五四歳 817)