●口伝
▲答へて云はく、此の義は最上の難の義なり。口伝に在り云云(法華真言勝劣事   文永元年七月二九日  四三歳 312)

▲口伝相承の事は此の弁公にくはしく申しふくめて候。則ち如来の使ひなるべし。返す返すも信心候べし。四条金吾女房御書   文永八年五月  五〇歳 464

▲一念三千の法門は但法華経の本門寿量品の文の底にしづめたり。(開目抄 文永九年二月 五一歳 527)

▲竜樹・天親は共に千部の論師なり。但権大乗を申(の)べて法華経をば心に存して口に吐きたまはず此に口伝有り。(法華行者値難事 文永一一年一月一四日  五三歳 720

▲問うて曰く、要法の経文如何。答へて曰く、口伝を以て之を伝へん。(曽谷入道殿許御書 文永一二年三月一〇日  五四歳 785

▲此の事は余が第一の秘事(ひじ)なり。委細には向かって問ふべし。(撰時抄 建治元年六月一〇日  五四歳 847

▲ちくご(筑後)房、三位、そつ(帥)等をばいとま(暇)あらばいそぎ来たるべし、大事の法門申すべしとかたらせ給へ。(弁殿御消息  建治二年七月二一日  五五歳 998

▲御臨終のきざみ、生死の中間に、日蓮かならずむか(迎)いにまいり候べし。三世の諸仏の成道は、ねうし(子丑)のを(終)はりとら(寅)のきざみ(刻)の成道なり。仏法の住処は鬼門の方に三国ともにたつなり。此等は相承の法門なるべし。(上野殿御返事    弘安二年四月二〇日  五十八歳 1361

▲かゝるいと心細き幽窟(ゆうくつ)なれども、教主釈尊の一大事の秘法を霊鷲山にして相伝し、日蓮が肉団の胸中に秘して隠し持てり。(南条殿御返事    弘安四年九月一一日  六〇歳 1569

▲一 授職法体(じゅしょくほったい)の事
 仰せに云はく、此の文は唯仏与仏の秘文なり。輒(たやす)く云ふべからざる法門なり。十界三千の諸法を一言を以て授職する所の秘文なり。其の文とは神力品に云はく「皆於此経(かいおしきょう)宣示顕説(せんじけんぜつ)」の文是なり。是の五字は即ち十界同時に授職する所の甚深の秘文なり。十界己々の当体、本有の妙法蓮華経なりと授職したる秘文なり云云。(御講聞書    弘安三年五月二八日  五九歳 1860

一 末代譲り状の事
 仰せに云はく、末代とは末法五百年なり。譲り状とは手継(てつ)ぎの証文たる南無妙法蓮華経是なり。此を譲るに二義之(これ)有り。一には跡を譲り、二には宝をゆづるなり。一に跡を譲るとは、釈迦如来の跡を法華経の行者にゆづり玉へり。其の証文に云はく「如我等無異」の文是なり。次に財宝をゆづると云ふは、釈尊の智慧戒徳を法華経の行者にゆづり玉へり。其の証文に云はく「無上宝聚、不求自得」の文是なり云云。さて此の題目の五字は譲り状なり云云。1860