http://www.suttaworld.org/big5-txt/sutra/kgin/kgin19/997/997.htm
守護国界主陀羅尼経 阿闍世王受記品第十
死後、地獄、餓鬼、畜生、人界、天界へ赴く臨終のそれぞれの相
――――――――――――――――――――――――――
■ 地獄
大王當知若人命終當墮地獄有十五相。當生餓鬼有八種相。當生畜生有五種相。當生人天各有十相。大王何等名為當生地獄十五種相。
一者於自夫妻男女眷屬惡眼瞻視。
二者舉其兩手捫摹虛空。
三者善知識教不相隨順。
四者悲號啼泣嗚咽流淚。
五者大小便利不覺不知。
六者閉目不開。
七者常覆頭面。
八者側臥飲噉。
九者身口臭穢。
十者腳膝戰掉。
十一鼻梁欹側。
十二左眼[目*閏]動。
十三兩目變赤。
十四仆面而臥。
十五踡身左脅著地而臥。
大王當知若有臨終具十五相如是眾生。決定當生阿鼻地獄。
―――――――――――――――――――――――
【通解】
大王よ、まさに知るべし。もし人が命終するにあたりて堕地獄の十五相あるべし。
まさに餓鬼に生ずるに八種の相有るべし。
まさに畜生に生ずるに五種の相有るべし。
まさに人天に生ずるに十相有るべし。
大王よ、いずれをかまさに地獄に生ずべき十五種相と為すと名づくや。
一は自の夫妻男女眷属を惡眼もて瞻視(せんし=見る、見守る。)す。
二はその両手を挙げて虚空を捫摹(もんぼ=悶絶のこと。)す。
三は善知識の教えに隨順せず。(不相隨順(ふそうずいじゅん)=不相は「〜がない、しない」隋順は従う事。)
四は悲號啼泣嗚咽(ひごう ていきゅう ういん=悲しみ、大声をあげ、さけび、むせび、泣くこと。)して流涙す。
五は大小便、利を知らず覚えず。
六は閉目して開かず。
七は常に頭面を覆う。
八は臥して飮噉(いんだん、いんたん、噉=喰らう事。)す。
九は身口臭穢。(しんくしゅうえ)
十は脚膝戰掉(きゃくしつせんじょう)。
掉=じょう
(2) 脱落する
(3) なくす,抜け落ちる
(5) 逆方向を向く,向きを変える
(6) 互いに取り替える,入れ替える
十一 鼻梁欹側(びりょういそく)。欹=い そばだてる。そば立つ
十二 左眼[目*閏]動(さがんじゅんどう)。
十三 両目變赤。(りょうがんへんせき)
十四 面仆臥(めんふが、めんぼくが)。仆=たおれる。
十五 踡身(けんしん=身が縮こまるorうつむく様)して左脇を地につけて臥せる。
大王よ、まさに知るべし。
もし臨終に十五相具する衆生、此の如く阿鼻地獄に生ずと決定す。
―――――――――――――――――――――――
■ 餓鬼
大王當知若復有人。臨命終時有八種相。
當知必墮焰摩羅界餓鬼趣中。云何為八。
一者好舐其脣。
二者身熱如火。
三者常患飢渴好說飲食。
四者張口不合。
五者兩目乾枯如G孔雀。
六者無有小便大便遺漏。
七者右膝先冷。
八者右手常拳。
何以故心懷慳吝乃至於水不與人故。大王若具八相。命終決定生餓鬼中。
―――――――――――――――――――――――
【通解】
大王よ、まさに知るべし。
もしまた人ありて、命終の時に臨み八種の相あらば、まさに知るべし、必ず焔摩羅界の餓鬼趣の中に堕つべし。
何が八となすや。
一は好くその脣を舐む。
二は身の熱すること火の如し。
三は常に飢渇を患い、好んで飮食を説く。
四は口張り、合わず。
五は両眼乾き枯れて、G(ちょう=孔雀)のごとし。
六は小便有ることなく、大便、漏れ遺す。
七は右膝先ず冷ゆ。
八は右手が常に拳。
何をもって故に、心に慳吝(けんりん、吝嗇で慾深いさま。)
)を懷(いだ)き、水を人に與(あた)えざるが故なり。
大王よ、もし八相を具すれば、命終し餓鬼の中に生ずと決定す。
―――――――――――――――――――――――
■ 畜生
大王當知若復有人。臨命終時有五相現。是人決定墮畜生趣。云何為五。
一者愛染妻子貪視不捨。
二者踡手足指。
三者遍體流汗。
四者出麤澀聲。
五者口中咀沫。
大王若具此五者。命終決定墮畜生趣。
――――――――――――――――――――
【通解】
大王よまさに知るべし。
もしまた人ありて、命終時に臨んで五相を現ずること有り、その人決定して畜生趣に墮す
何を五と為すと云うや。
一は妻子を愛染(愛に執着する様)して貪視(執着した視線、目つき。)して捨てず。
二は手足指踡(げん・けん=かがむ)
三は遍體流汗。(へんたいりゅうかん。体中に遍く汗が噴き出し流れる)。
四は麤(す、そ、ぞ=肌理(きめ)があらい。粗末な)澀(しゅう、そう、じゅう=しぶい)の聲を出す。
五は口中に沫を咀む(かむ)。
大王よ、もしこの五者を具すれば、命終して畜生趣に墮すと決定す。
―――――――――――――――――――――
■ 人界
大王當知若復有人。臨命終時有十相現。是人決定生人趣中。云何為十。
一者臨終生於善念。謂生柔軟心福コ心微妙心歡喜心發起心無憂心。
二者身無痛苦。
三者少能似語一心憶念所生父母。
四者於妻子男女作憐愍心。如常瞻視無愛無恚。耳欲聞於兄弟姊妹親識姓名。
五者於善於惡心不錯亂。
六者其心正直無有諂誑。
七者知於父母親友眷屬善護念我。
八者見所營理心生讚歎。
九者遺囑家事藏舉財寶示之令出。
十者起淨信心請佛法僧對面歸敬。言南謨佛陀南謨達摩南謨僧伽我今歸依。若無佛世歸五通仙。
大王若臨命終具此十相。決定得於人趣中生。
――――――――――――――――――――――
【通解】
大王、まさに知るべし。
もしまた人有りて、命終の時に臨んで十の相を現ずることあらば、是の人は人趣の中に生ずること決定す。
何を十と為すと云うや。
一は臨終に善念を生ず。柔軟心、福徳心、微妙心(微妙=通常人が夢にも知ることができぬ大法=妙法)歓喜心、発起心、無憂心。を生ずと謂う。
二は身に痛苦なし。
三は能く(誠意に)似せた語は少なく、一心に所生の父母を憶念す。
四は妻子男女に憐愍心を作(な)す。常に無愛無恚(ぶあいぶけい=愛(えこひいき)なく平等なさま)の如くに瞻(せん→見る)視し、耳に兄弟姉妹親識(親戚)の姓名を聞かんと欲す。
五は善においても悪においても心錯亂(さくらん)せず。
六は其心は正直にして諂誑(へつらい心や欺くこと)あることなし。
七は父母・親友・眷屬の善く我を護念するを知る。
八は營理(道理に則り営むこと)するところを見て心に讃歎を生ず。
九は家事を遺囑(いしょく=遺族へたのむ)し、藏する財宝を擧げて之を示して出さ令む。
十は淨い信心を起こし、佛法僧を請じて対面し、帰依して敬う。
「南謨佛陀、南謨達摩、南謨僧伽、我今歸依す」
(南無仏・南無法・南無僧 仏法僧の三宝に帰依す)と言(のたま)う。もし無佛の世なれば五通仙に帰す。
大王よ、もし命終に臨んでこの十相を具さば、決定して人趣中に生じることを得ん。
――――――――――――――――――――――――――
■ 天界
大王當知若復有人。臨命終時有十種相定得生天。云何為十。
一者起憐愍心
二者發起善心。
三者起歡喜心
四者正念現前。
五者無諸臭穢
六者鼻無欹側。
七者心無恚怒
八者於家財寶妻子眷屬心無愛戀。
九者眼色清淨。
十者仰面含笑想念天宮當來迎我。
若臨命終具此十相決定生天
大王よまさに知るべし。
もしまた人有りて、命終の時に臨んで十相の現ずることあらば定めて天に生ずることを得ん。
何が十と為すと云うや。
一は憐愍心を起こす。
二は善心を發起す。
三は歓喜心を起こす。
四は正念が現前す。
五は諸の臭穢無し。
六は鼻の欹側(いそく)すること無し。
欹=そばだつ。そばだてる。
七は心に恚怒無し。
八は家財寶妻子眷屬に心に愛戀すること無し。
九は眼色清淨。
十は仰面して笑を含み天宮まさに来たりて我を迎うと想念す。
もし臨命終に此十相を具せば、決定して天に生ず。