●罪障消滅
▲生死を離るゝ時は、必ず此の重罪をけしはてゝ出離(しゅつり)すべし。
功徳は浅軽(せんきょう)なり。此等の罪は深重(じんじゅう)なり。
日蓮、強盛に国土の謗法を責むれば、此の大難の来たるは過去の重罪の今生の護法に招き出だせるなるべし。
木をもって急流をかけば、波、山のごとし。
睡(ねむ)れる師子に手をつくれば大いに吼(ほ)ゆ。573

▲賢聖は罵詈(めり)して試みるなるべし。
我今度の御勘気は世間の失(とが)一分もなし。偏(ひとえ)に先業の重罪を今生に消して、後生の三悪を脱れんずるなるべし。580

▲此の八種は尽未来際(じんみらいさい)が間(あいだ)一つづつこそ現ずべかりしを、日蓮つよく法華経の敵を責むるによ(依)て一時に聚(あつ)まり起こせるなり。(中略)「斯れ護法の功徳力に由る故なり」等は是なり。582

▲当世の王臣なくば、日蓮が過去謗法の重罪消し難し。582

▲過去の謗法の我が身にある事疑ひなし。此の罪を今生に消さずば未来に争(いか)でか地獄の苦をば免(まぬか)るべき。
「過去遠々(おんのん)の重罪をば何(いか)にしてか皆集めて今生に消滅して未来の大苦を免れん」と勘(かんが)へしに、当世時に当たって謗法の人々国々に充満せり。其の上国主既に第一の誹謗の人たり。此の時此の重罪を消さずば何(いつ)の時をか期(ご)すべき。
日蓮が小身を日本国に打ち覆(おお)ふてのヽしらば、無量無辺の邪法の四衆等、無量無辺の口を以て一時に・(そし)るべし。爾(そ)の時に国主は謗法の僧等が方人(かたうど)として日蓮を怨(あだ)み、或は頚(くび)を刎(は)ね、或は流罪に行なふべし。
度々かヽる事出来せば無量劫の重罪一生の内に消えなんと謀(くわだ)てたる大術少しも違(たが)ふ事なく、かヽる身となれば所願も満足なるべし。呵責謗法滅罪抄 文永一〇年  五二歳712

▲「今世に悪業成就し、乃至必ず地獄なるべし。乃至三宝を供養するが故に、地獄に堕せずして現世に報を受く。所謂頭と目と背との痛(なやみ)」(太田入道殿御返事 建治元年一一月三日  五四歳 911

▲止観に云はく「若し重罪有って乃至人中に軽く償(つぐな)ふと。此は是(これ)業が謝せんと欲する故に病むなり」911

▲貧道に値遇(ちぐう)して改悔(かいげ)を発起する故に、未来の苦を償(つぐな)ひ現在に軽瘡(きょうそう)出現せるか。913