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御義口伝講義　池田大作　・・・・(~_~;)

　疑難を破す

　本文に対する疑難
　　　　　
(１)　補註または科註の文

　次の文が補註の文か、科註の文か。

もし科註の文とすれば、時代の相違があるという論難がある。

（※平成新編では　「科註」　となっている）

　　　第十　如却関鑰（にょきゃっけんやく）開大城門（かいだいじょうもん）の事　　科註の四に云はく、此の開塔見仏は蓋（けだ）し所表有るなり。何となれば則ち開塔即開権（かいごん）なり。見仏即顕実（けんじつ）なり。是亦前を証し復（また）将に後を起こさんとするのみ。如却関鑰（にょきゃっけんやく）とは却は除なり。障除（のぞ）こり機動ずることを表はす。謂はく、法身の大士惑（わく）を破し理を顕はし道を増し生を損するなりと。

　ただこれだけの文が引用されてあるところから、御義口伝の真偽論までやかましく争っている。
いかに近代の御義口伝の研究なるものが、日蓮大聖人の仏法論、生命論から逸脱して、枝葉や末節に固執しているかがわかるであろう。

　御書全集の編纂者堀日亨上人は、大石寺の古写本たる元亀の写本に、ここが「補註」となっているところから、「補註」となされたものとみえるが、そのほかの御義口伝の各本は「科註」となっている。

宋の従義の補註四は文句一の下から二の下までを註記したものである。

しかして宝塔品は補註の九になっており、その文も御義口伝の引用の文とは大分違う。

科証四には、正しく御義口伝に引用の文と同じ文がある。

　ところで科註四の文が引用されているとなれば、

「この科註は日蓮大聖人の滅後十三年、元の徐行善が集めたものであり、いかに日蓮大聖人といえども、滅後十三年に出来上がった本の内容を、あらかじめ引用されるわけがない。

したがって御義口伝は偽書である」

などというのが、立正大学の執行（しゅうぎょう）海秀らの論法である。

　これに対する各宗派の本格的な反論もないが、ただわずかに日蓮正宗の富士学林の研究生三名が、教師講習会において研究発表をしたものが、大日蓮（昭和三十七年二月号）に掲載されている。

その内容は重複していたり、きわめてまわりくどい表現だったりして、いずれが決定的意見か把握しにくいが、概要は次のように論じている。

法華経科註とは、主として天台の文句および文句記を、科をかかげ註を加えたものである。
これに三種ありとされ

①　宋の守倫の註。

②　元の徐行善が註したもの「徐氏註」という。

③　明の法済が訂正したもの「倫註」という。

　現在では①の守倫の註は失われてしまい、現存するものは②と③である。

ここで想像できるのは、

　①　宋の守倫の註が早くから日本に渡ってきていて、日蓮大聖人は、これを見て引用なされたのであろう。
ただし、守倫註が日本へ渡ってきていたかどうか、また守倫の旧本の内容が失われてしまって不明であり、現在のと同じかどうかも決定的なことはわからない。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　②　次に想像できることは、祖滅十三年に成立した徐氏の註が、間もなく日本へ渡ってきて、おそらく日興上人が、宝塔品第十一のところへ附加されたものであろうともいう。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　いずれにしても本講義は、それらを究明するのが目的でないから、詳しい論述は省略するが、元亀本、創価学会版のとおり補註とするのにも、相当の根拠があってのことであるし、補註なら時代の相違は問題ない。

科註にしても前述のような想像が可能であってみれば、ただこの一箇の案をもって偽書扱いするなどというのは、暴言妄論も甚だしいといわざるをえない。

　　　　　(２)　弘安元年正月一日の文

　御義口伝は上下巻とも最後の日附が、弘安元年正月一日となっている。

建治四年は一月に弘安と改元されているのであって、正月一日から弘安を使うわけがないという。

御義口伝は日蓮大聖人の講義を、日興上人が加筆されたものであって、その講義も、必ずしも建治三年の年末までで終わったとはいい切れない。

講義は弘安年間にはいっても続けられたことが御抄に見られるので、この時代のものも、御義口伝の中に、はいっているといえる。

ただ弘安元年正月一日が、講義の一往の終了の時期であったか、ほかにまたなにかの原因があって、こういう日附となされたか。

日附を後から入れる場合には、建治を使わずに、正月一日から弘安を使うような例は、他にもよく見られることで、不思議はないのである。

いずれにしても、これが偽書論の論拠にならないことはいうまでもない。

　　　　③　執行海秀等の愚論
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　御義口伝に疑難を加える者として、今日よくその名を聞くのが、立正大学教授の執行海秀である。

しかし、いきなり彼の御義口伝の真偽論をとりあげても、意味がない。

彼は日蓮大聖人の仏法を知らないで、自己流の仏教に執著し、その我見で御義口伝を判断するので、およそ日蓮大聖人の御義口伝とは似ても似つかない迷論愚論に陥っている。

　次にまず彼の論文の一部を引用してみよう。

　執行海秀・日蓮教学上に於ける御義口伝の地位（印度学仏教学研究・第三巻第一号）

　　　　　　　　　　　　　　
　「そもそも本書は、①　観心主義の思想を基調とするので、②　五百塵点を事顕本とし、この事顕本に対して無作三身の理顧本を如来秘密神通之カの文に依て強調している。
③　無作三身の宝号を南無妙法蓮華経というも、それは凡夫の当体本有の儘を指したものであり、また三千の諸法に名ずけたものに他ならない。……かくして十界諸法の理顕本を以て　④　寿量品の極意とし、森羅万象を自受用身の自体顕照と談ずるわが本門の事円であるといい、久遠とはいろはずつくろはぎる有の儀の姿であると釈している」

　この程度の御義口伝の理解では、とうてい真偽論など戦わすことが不可能なことは明らかであるが、せっかく引用のついでに、二、三の破折を加えておくこととする。

　①　そもそも本書は観心主義を基調にしているというが、日蓮大聖人の仏法は、観心主義が基調となるくらいは、いかなる幼学の徒も知りぬいているであろう。
　もし観心主義がいけないなら、教相主義でいくというのか。
しからば「観心の本尊抄」を捨てて、新たに「教相の本尊抄」を執行君が書かなくてはならないであろう。

　②　五百塵点を事顕本とし、無作三身を理顕本とするというが、それは一体誰れの説か。
執行君の独断説であり、日蓮大聖人や日蓮正宗とは関係がない。
本迹相対する時は、迹門の理に対して本門は事となるが、種脱相対する時には、本迹ともに迹となり理となって、文底下種の一念三千のみが、真実の事行の一念三千となるのである。

　③　無作三身のことを、彼は、理顕本であり、宝号を南無妙法蓮華経といい、凡夫の当体本有の儀であり、また三千の諸法に名づけたものといっている。
ここでも肝心のところを知らない。
すなわち無作の三身とは末法の法華経の行者であり、無作の三身の宝号を南無妙法蓮華経というのである。
末法の法華経の行者とは日蓮大聖人で人本尊を表わし、宝号を南無妙法蓮華経とは、法本尊を表わす。
すなわちこれこそ人法一箇の三大秘法の大御本尊をお示しの文である。
総じていえば、凡夫の当体本有の儘も、三千の諸法も、ことごとく無作三身であるが、別して本有無作三身の教主釈尊とは、本仏日蓮大聖人であらせられることを、御義口伝に．説かれているのである。
　　　　　　　　　　　　　　
　④　寿量品の極意以下も、論理が支離滅裂である。
そもそも寿量品の極意とはなにか。
文上には五百塵点劫成道の仏の本地を明かしているが、その文底には、久遠元初の三大秘法が秘し沈められていることを知らなくては、久遠を論ずる資格がないのである。

　またさらに御義口伝に疑難を加えるものがよくいうのは、文書の形態が日蓮大聖入滅後の南北朝時代に成立した中古天台の、等海口伝等に似ているなどという。

三大秘法抄にお示しのとおり、仏教の極理は面授口決によってのみ、正しく後世へ伝えられるのである。

口伝や文体が似ているからといって、中古天台の観心や寿量顕本や無作三身論と、日蓮大聖人の仏教の真髄との見分けがつかないようでは、自己の低迷ぶりをさらけ出している以外の何ものでもないのである。

　また種脱相対論や宗祖本仏論があるから偽書だなどというのは、邪宗邪義の徒輩がいつもいうことで、珍しくはない。
種脱相対も本仏論も観心主義も、みな開目抄や観心本尊抄に明々白々のとおりである。

また身延派などでは、日向記に対抗して、日興記の御義口伝が偽作されたなどという、奇想天外の説をなす者もあるというが、こんなのはもとより問題とならない。

このように本書を疑う根拠は何ものもない。

ゆえに執行海秀にしても、結論は次のように、実にあいまいとなっている。

こんなあいまいもこたる結論を聞いて、御義口伝そのものが偽書扱いされたかなどと騒ぐほうが、むしろおかしいではないか。

　「ところで本書は古来より真偽の論がある。・・・・本書は思想的にも文献的にも、日蓮教学上に於ける第一資料とすることには躊蹄せざるをえないのである」

　後人の加筆に対する疑難

　　　　　
（１)　当体蓮華抄の文

最初の南無妙法蓮華経の事の終わりの文（七〇八）　

「……八葉九尊の仏体なり能く能く之を思う可し巳上」　　の次に

「抑も此の蓮花所所の処を尋ね侯えば、何なる河地に開け、何なる処、何なる境に生きる華とやせん。若し霊山の北か、うずいの南無熱池と云う池に大白蓮華開け不思議のベラ華を備えたり、以て彼を妙法蓮華と号す可きか。亦法伽はら王の他に千葉の蓮華開く。而るに人中の蓮華は十余業、天上の蓮華は百葉、仏菩薩の蓮華は千葉なり。是を以て妙法蓮華と云う可きか。又白鷺池……功能此くの如し」

という相当の長文がある（要法寺版等）。

しかもその文は録外廿三の当体蓮華抄と同じ文が引かれていることになるところから、論難するものがあった。

しかし創価学会版御書全集には削除されているように、この文は　「……巳上」　で終わった後に、後人の附加した文である。
ゆえに当体蓮華抄と同文があったからといって、御義口伝そのものを疑う理由とはならない。

(２)　老僧の所望等の文

本文の最後の　

「……法とは上行所伝の題目なり（八〇三）　　の次に、次のような奥書が載っている本がある。

「六老僧の所望に依て老後たりと雖も、日蓮が本意の一端、講談せしめ畢んぬ。是れ併しながら私集最要文を読誦せしむる所なり。然る間法華一部の諸要文書き付け畢んぬ。此の意は或は文を隠して義を取り、或は義を隠して文を取り、或は文義共に顕し、或は文義共に隠して講談するなり。委しくは註法華経を見らる可きなり。然りと雖も文義深遠なる間、愚昧に及ぶ可からざるなり。広宣流布の要法、豈に此の註法華経に過ぎんや。就註（しゅうちゅう）法華経御義口伝巻下日蓮在御判　日興之を記す」　（大正大蔵経による）

　この文に六老僧とあるところから、弘安元年に六老僧はなかった。本弟子六人と定められたのは弘安五年御入滅直前のことである等と論難するものがある。

　たし確かにそのとおりであって、此の文もまた、後世の者の附加した文である。
ゆえに、ただ「老僧の所望」とでもあればよいところを、後世の者が「六老僧」としたまでである。

　創価学会版にはこの文が削除されているが、「広宣流布の要法宝に此の註法華経に過ぎんや」
等の文は、創価学会の王仏冥合の実践活動によって初めて証明されたのである。

(３)　高祖の御義等の文

　さらにまた、前記に引き続いて、次のような奥書がある。

「本伝に云く、御義口伝と云う事、何れも高祖の御義なり。御流れなる間、口伝と云うなり。本末師等の疏釈其の外見合せ、御義を以て法門を荘厳し奉る可きなり。初心の行者の及ぶ可からざる法門なり。此は註法華経を置かせ給いて、六老僧の為に身延山に於て御談有るなり。此の已前甲州の日春日法の所望に依て御談有りき、提婆品の時、蛇来りて聴聞せり。八歳の竜女なりと仰せらる。此の書授与の末代の亀鏡は此の御法門なり。其の時の執筆日興なり云云。弘安元年戌寅正月一日執筆日興花押。六老僧花押」（大正大蔵経による）

以上の文も、明らかに後世に附加された文である。
それゆえ、これをもとにして、御義口伝そのものを疑うことは決してできないのである。

　たしかに日蓮大聖人の御在世中に、大聖人のことを「高祖」と申し上げ、その教えを「御義なり」などといったかどうか。
疑問にならないわけでもない。
しかし、後世に書き加えられた文であるならば、「高祖」とも、「御義」とも申し上げるほうが、当然であろう。

しかしまた、日蓮正宗富士大石寺においては、御開山日興上人いらい、日蓮大聖人の教えを正しく伝承し、日蓮大聖人こそ末法の御本仏なりと拝してきている。

ゆえに、たとえ御在世中であっても、「高祖の御義」と申し上げるほうが、当然であった。

ゆえに原殿御書には

「いづくにても聖人の御義を相継ぎ進らせて、世に立て侯はんこそ詮にて侯へ」

とお述べになっているのである。

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