●魔
▲「若し衆生生死を出でず仏乗を慕はずと知れば、魔是(こ)の人に於て猶(なお)親(おや)の想(おもい)を生(な)す」1063

▲魔の習ひは善を障(さ)へて悪を造らしむるをば悦ぶ事に候。強ひて悪を造らざる者をば力及ばずして善を造らしむ。又二乗の行をなす物をばあながちに怨(あだ)をなして善をすヽむるなり。又菩薩の行をなす物をば遮(さえぎ)りて二乗の行をすヽむ。最後に純円の行を一向になす者をば兼別等に堕(お)とすなり。(常忍抄   弘安元年一〇月一日  五七歳 1285

▲月々日々につよ(強)り給へ。すこしもたゆ(弛)む心あらば魔たよりをうべし。(聖人御難事 弘安二年一〇月一日 五八歳 1397)

▲一分のしるしある様なりとも、天地の知る程の祈りとは成るべからず。魔王・魔民等守護を加へて法に験(しるし)の有る様なりとも、終(つい)には其の身も檀那も安穏なるべからず。 諌暁八幡抄    弘安三年一二月  五九歳 1531

▲此の世界は第六天の魔王の所領なり。一切衆生は無始已来彼の魔王の眷属(けんぞく)なり。六道の中に二十五有と申すろう(牢)をかま(構)へて一切衆生を入るヽのみならず、妻子(めこ)と申すほだし(絆)をうち、父母主君と申すあみ(網)をそら(空)にはり、貪(とん)・瞋(じん)・癡(ち)の酒をの(飲)ませて仏性の本心をたぼら(誑)かす。但あく(悪)のさかな(肴)のみをすヽめて三悪道の大地に伏臥(ふくが)せしむ。たまたま善の心あれば障碍(しょうげ)をなす。980