「辱めだった」…エホバの証人で「性的虐待」159人が被害申告 集会で性的文言の音読強要 宗教2世ら調査

2023年11月29日 06時00分

 宗教団体「エホバの証人」の宗教2世らでつくる「JW児童虐待被害アーカイブ」は28日、2世らへの性的虐待の調査で、159人から被害申告があったと公表した。

9割近くが年齢に見合わない性的表現を含んだ資料を見せられ、2割強が体を触られるなど直接の性暴力があったと訴えた。


◆触られ、見られ、撮られ…「半数は加害者が教団の役職者」

 調査は7月、オンラインで実施した。
「信者から性暴力を受けた」と答えたのは37人。
未成年時の被害は35人で、うち5人が男性だった。

内容(複数回答)は
「体を触られた」が24件で最多、
「下着姿や裸を見られた、撮影された」11件、
「性交渉をさせられた」4件。

半数は加害者が教団の役職者
という。

21人は「言えばムチ(打ち)をされる」などとして被害相談をしていない。

 「集会で年齢に見合わない性的表現を含む資料を見せられるなどした」と回答したのは139人。
就学前や小学校低学年時に、避けるべき性的行為の教育として、具体的な性的文言を含む出版物を見せられ音読させられるなどし「辱めだった」という声があった。


 「幹部らに性的経験を話すよう強制された」のは42人。
異性交際などをとがめられ、幹部に囲まれて性的接触の有無や詳細を答えるよう迫られた
という。


◆教団側回答「いかなる形の児童虐待も容認していない」

 厚生労働省は昨年末、宗教虐待の対応に関するQ&A文書をまとめ、年齢に見合わない性的表現を含む資料を見せることなども虐待に当たると明示したが、調査では、その後の被害も複数確認された。

 東京都内で記者会見した団体メンバーは、性的虐待の背景に、

教団の男性優位の体制
信者家族間の親密な関係の中で子どもをてなずける「グルーミング」が起きやすいこと、
外部への通報が制限されていた時期がある

など組織的な問題を指摘した。

発起人の道子さん(仮名)は「人権を侵害する慣習が内在している。被害が表に出ないのは訴える力を奪われているためだ」と強調した。

 教団側は取材に「いかなる形の児童虐待も容認していない」と文書で回答した。(太田理英子)


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弁護士ドットコム ニュース

民事・その他

「エホバ信者の自宅で性被害起きている」 就寝中に触られたなどの証言も…2世ら調査に教団側は否定

会見するJW児童虐待被害アーカイブのメンバー(2023年11月28日、弁護士ドットコム撮影)

2023年11月28日 17時40分

キリスト教系宗教団体「エホバの証人」の元信者らでつくる「JW児童虐待被害アーカイブ」は11月28日、教団内での性被害についてSNSを通じて行った調査結果を発表した。
2022年末に厚生労働省が出した判断基準となるQ&Aを元に、2023年7月の1カ月間に寄せられた159件について分析した。

「未成年時に信者から性暴力を受けた」との証言は35件(男性5、女性30)で、うち9人と面接。
信者同士で宿泊したり、食事をするなどの慣習があるため、自宅での被害が目立った。
「交わり(食事やお茶をする慣習)の時、私の部屋に入ってきてベッドに押し倒された」
「若い夫婦宅に泊まった時、寝ている間に接触させられた」
などの証言や、親や兄からの被害を訴える声もあった。

同団体は「調査は限られた範囲であり、あくまで傾向を示すもの」と断っているが、分析を担当した2世の藤見永子さん(仮名)は
「少数だからといって見過ごせない。虐待は1件たりともあってはならないからです。
これは氷山の一角で、現役信者こそ知る必要がある」と強調した。

エホバの証人日本支部広報部門は弁護士ドットコムニュースの取材に対し
「すでに児童保護に真剣に取り組んでおり、『子どもにとって安全』な組織です。
団体の報告には、明らかに間違った情報が含まれているようです」
などと反論している。

● 現役長老も「子ども守らなければ」

同団体は159件を3分類し、集計した(現役12件、元信者147件)。
20?60代が回答し、
「集会や出版物で性的表現などをされた」が139件、
「長老と呼ばれる幹部などによる性的経験の聞き取りを強制された」42件、
「信者から性暴力を受けた」が37件だった。

いずれも経験があるかだけでなく自身が「性的虐待」と感じたかを含めて質問した。

記者会見には、面接に当たった公認心理師2人と現役の長老(幹部)も音声だけで出席。
心理師の一人は、教理によって抑圧された大人の性欲が子どもたちに向かっている側面があるのでは、とした上で「早急に組織外の介入が求められる」と説明した。

また、長老は信者以外との婚前交渉をした女性に対して聞き取りをした経験について話した。
子どもを守るということは共通の価値観だとの思いから協力を決意したという。

「社会通念上、ハラスメントに当たる言葉はあったと思います。
女性には申し訳ない。
信者の子どもが危険にさらされていると感じられる部分もまだ残っています。
教団は真摯に対応してほしい」

●「オーストラリアのような公的調査を」

オーストラリアでは2015年に国による調査があり、教団内で1800人以上の被害者、1006人の加害者の記録を保持していることがわかっているという。
これについて教団側は同日午後7時ごろ、メールで回答。
委員会は被害者1000人とは断定しておらず、全て立証されていない申し立てにすぎない、と説明。
「ほとんど全て家族内で虐待があったと主張するもので、組織内の虐待に関するものではない」とした。

代表の綿和孝さん(仮名)は「信仰を砕こうとか組織を壊そうというわけではありません。子どもを守るという点ではノーサイドでいきましょう」と現役信者にも呼びかけ、国に実態調査などを求めた。

この日、こども政策担当大臣・法務大臣・文部科学大臣あてに「性的虐待の防止について」とする要望書を提出した。
エホバの証人広報に3回メールを送っているが、同日午後2時時点で返答はないとした。

※編集部注:エホバの証人日本支部広報部門の回答を追記した(2023年11月28日午後7時35分)


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「エホバの証人」元2世信者が公表した実態とは 母たちの前で「射精は?」「手か口か」と聞かれ

2023/11/29/ 16:35

國府田英之

会見した元2世信者の綿和孝さん(仮名=右)と道子さん(仮名)

 宗教団体「エホバの証人」の元2世信者らで作る団体が28日、東京都内で会見を開き、教団内での児童に対する性的虐待についての調査結果を公表した。
幹部や年上の信者から幼少期に性暴力を受けたり、未成年の時に幹部から性行為の経験の有無を問いただされたりしたなど、性的虐待を受けたとの回答が多数あったことを明かした。
一般社会とはかけ離れた教団内の実態が垣間見えた。

 アンケートを実施したのは元2世信者らでつくる「JW児童虐待被害アーカイブ」。今年7月、インターネット上で元2世信者らに対して行った。

 同団体は28日午前、こども家庭庁に調査結果と、公的な調査などを求める要望書を提出した。

 アンケートの質問は、

(1)信者による性暴力や性的虐待を受けたことはあるか

(2)集会での大人たちの言葉や教団内の出版物に書かれていた文言について、性的虐待だと感じたことはあったか

(3)信者が、教団の禁止事項を破った疑いを持たれた際に開かれる審判「審理委員会」で、性経験を話すよう強制され、それを性的虐待だと感じたことはあったか

 3項目に分類して回答を求め、計159人から有効回答を得た。

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★ 「長老」からの被害も

 さらに、「性的被害を受けた」と回答した人の中から、面接が可能だった女性10人、男性1人の計11人に、公認心理士の立ち会いのもと、被害について証言してもらった。

(1)「信者による性暴力や性的虐待を受けたことはあるか」について、「受けた」と回答したのは37人。うち35人(女性30、男性5)が被害当時、未成年だった。

 主な被害の内容(複数回答可)は
「性交渉をさせられた」=4件、
「衣服の上から、または直接、体を触られた」=24件、
「下着姿や裸を見られた、撮影された」=11件、
「加害者の体などを触らされた」=8件、


だった。

 加害者との関係(複数回答可)で最も多かったのは「顔見知り」で23件
「長老」と呼ばれる地域の幹部からの被害も12件あった。
場所は信者の自宅が最も多く、身近な場所での被害が多いことが明らかになった。

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(2)「集会での大人たちの言葉や教団内の出版物に書かれていた文言について、性的虐待だと感じたことはあったか」について「性的虐待だと感じた」と答えたのは139人
このうち、6歳までに被害を受けた人が49人と最も多く、全体の8割以上が12歳までの幼少期に被害を受けていた。

 地域の信者らの集会では、教団内で性的に禁止されている行為について、大人と小さな子どもが一緒に学ばされる。
また、エホバの証人の出版物には、性的に禁止されている行為が明確に示されている。

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★ 園児のころから具体的な性的単語を聞かされ

「幼稚園のころからマスターベーション、セックスという単語を頻回に耳にしてきた。年齢にそぐわぬ性的知識を問答無用で与えられた」 

「年端もいかない子供が(出版物に書かれていた)『オーラルセックス』『ペッティング』などの言葉を音読させられる辱めを受けた。今思えば完全な性的虐待」 

「『マスターベーションがなぜだめか』を、場面を設定して説明させられた。大変苦痛だった」

「エホバの証人に参加していなければ、段階を踏んで性の知識を得ることができ、現在までに至る性的倒錯と自己嫌悪に悩むことはなかっただろう」


 など、その行為がどのようなものかを知らないうちに、“学び”を強制されていたケースが大半をしめた。

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(3)「信者が、教団の禁止事項を破った疑いを持たれた際に開かれる審判「審理委員会」で、性経験を話すよう強制され、それを性的虐待だと感じたことはあったか」
「審理委員会での性的虐待があった」と回答したのは42人。うち未成年は15人だった。

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★ 親の前で「避妊具の使用は? 射精は?」

 エホバの証人は婚前交渉を禁じているが、性行為をしたなど「罪」に当たる行為をした信者には、「審理委員会」と呼ばれる宗教裁判のような場が設けられ、地域の幹部たちに詰問される。
反省が見られない場合、親や信者らとの関係を断つ最も重い「排斥」処分が下されることもある。

 数々の回答は、未成年を根掘り葉掘り詰問する、社会常識からかけ離れた実態を表していた。

「性行為を行った回数、何月何日、何時に始めたか、何分に挿入したか。エクスタシーを感じたか。50代と70代の長老から、親の前で聞かれた」

「長老と母の前で、事細かく性行為の流れを話すよう強要された。キスの有無。避妊具の使用は。射精はどうしたのかなど」

「具体的に相手の性器に触れたか。それは手か口かを聞かれた」

「どのような性行為を行ったか。どんな気持ちだったか(興奮したかとか)。密室で長老3人を前に、話さざるを得ない圧力を感じた」

 調査にかかわった元2世信者の道子さん(仮名)は、

「エホバの証人の子供たちは、たとえばパン屋さんになりたいだとか、将来の夢を語ることすら許されない。その状況で性被害を受けてきています。被害を訴えようという力がない人もいるはずで、もっとたくさんの被害者がいると思っています」

 と氷山の一角である可能性を指摘する。


性被害が起きやすい「土壌」とは

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 聞き取り調査をした公認心理士によると、大人になってからも精神的な被害が回復していない被害者も多かったという。

「(ルールによって)抑圧された大人の性欲が、子どもに向けられている。教団の子供たちを救ってほしいと聞き取りをした全員から聞くことができました

 JW児童虐待被害アーカイブはあくまで任意団体で、活動には限界があり、当事者たちもそれを認める。

 代表の綿和孝さんは、「公的調査をしていただき、被害者たちを救済する制度を作っていただきたい」と、国に期待を寄せた。

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★ 身近な相手から性被害

 エホバの証人の児童に対する性的虐待の実態調査が公表されたが、定期的に集まるグループ内での被害が最も多く、行為の場所も「信者の自宅」が最多だった。

 なぜ身近で被害に巻き込まれ、誰もそれに気づかないのか。
調査にかかわった元2世信者は、

「エホバの証人には性暴力や性被害が起きやすい、特有の環境がある」

 と口にする。

 綿和さんらによると、エホバの証人の信者たちは「交わり」と呼ばれる、信者同士や信者の家族同士の親密な交流を大切にするという。

 子どもたちの「お泊まり会」。「食事招待」と呼ばれる信者の家に招かれて食事をするイベントや、レクリエーションを催したりして親しく付き合うのだ。

 良い関係づくりにも映るが、綿和さんら元2世が問題視するのは、家族同士の「距離感の異常さ」だという。

 例えば、男性や思春期の少年がいる家庭に、幼い娘を一人で泊まりに行かせてしまう。

「今思えば不思議なほど、毎年のように他人の家に一人で泊まりに行っていました」と元2世の女性は振り返る。

 家族で遊びに行った際、相手の家の男性や思春期の少年が、自分の娘を膝の上に乗せたり、身体接触を伴う遊びをしたりしていても、誰かがとがめることはない。

 遊びに行った家で、男性や少年の部屋に、自分の娘が一人で入り、いわば閉鎖された状態で遊んでいても、親たちは不安を抱かずおしゃべりに夢中になっている。

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★ 我が家での「交わり」

「小学生の娘を、他人の家の男性が膝に乗せてじゃれあっていたら、普通に考えたら『キモイ』と思いますよね。
誰かの家に行っても、小さな子供は親の目が届くところで遊ばせるはずで、ましてや男性や少年の部屋で、娘を1人で遊ばせるなんてことはさせないでしょう。
ところが、エホバの証人の親たちは、どこも我が家かのように安心しきってしまい、娘が膝に乗せられていても『きょうもかわいがってもらってよかったね』などと言ってしまうのです」(前出の女性)

 事実、アンケートでも、

「食事招待で被害にあった。大人は大人同士のおしゃべりに夢中でまったく子供の様子を見ていなかった。
加害者は信用ある年の若い2世で、加害者がいるなら安心と大人たちは思っていたのではないか」

「親とともに加害者宅に訪問。加害者の個室に呼ばれて被害にあった」

「我が家での『交わり』の際、私の部屋に入ってきて2人になりベッドに倒され、性交渉させられそうになった」

「若い夫婦の信者宅に泊まりに行き、定期的に被害にあった」

 などの回答があった。

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★ 王国が第一、子どもは二の次

 信者の家族同士の、根拠のない安心感に基づいた交流の場。
加害者の立場から見れば、「疑いを持たない」心理を利用し、加害行為をする環境を容易に作ることが可能だ。
「楽園ができてしまう」と元2世信者らも危機感をあらわにする。

 さらに、性被害を訴えても2人か3人の目撃者がいないと、教団内の宗教裁判である「審理委員会」は開催されない。
逆に訴えた側が処罰されたケースもあるなど、被害者の立場が圧倒的に弱い。

「仮に加害者が長老などの地域の幹部だった場合、『あの人がそんなことするはずがない』と親が聞く耳を持とうとしないケースもあるのです」(綿和さん)。

 エホバの証人は婚前交渉を禁じるなど性的行為のルールが厳しく、性的にゆがみやすい環境にある。

 綿和さんは、「エホバの証人の親たちは王国が第一で、子どもは二の次。人の扱い方にゆがみがある」と指摘し、こう続けた。

「子どもたちが性被害に遭いやすい構造的な問題は今も続いています。
現役信者の大人たちにこそ知って欲しい事実で、信者だからと安易に信用せず、自分の子どもを守って欲しいと思います」

(AERA dot.編集部・國府田英之)

著者プロフィールを見る
1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。