0686
　　　　弁殿尼御前（※１）御書　文永一〇年九月一九日　　五二歳

　貞任（さだとう）は十二年にやぶれぬ。
将門（まさかど）は八年にかたぶきぬ。
第六天の魔王、十軍（※2）のいくさをを（起）こして、法華経の行者と生死海の海中にして、同居穢土（どうごえど※3）をと（取）られじ、うば（奪）はんとあらそう。
日蓮其の身にあひあ（当）たりて、大兵をを（起）こして二十余年なり。
日蓮一度もしり（退）ぞく心なし。
しかりといえども弟子等・壇那等の中に臆病のもの、大体或はを（堕）ち、或は退転の心あり。
尼ごぜんの一文不通の小心に、いまヽでしり（退）ぞかせ給はぬ事申すばかりなし。
其の上、自身のつか（仕）うべきところに、下人を一人つけられて候事、定めて釈迦・多宝・十方分身の諸仏も御知見あるか。恐々謹言。
　　　九月十九日　　　　　　　　　　　　　　　　日　蓮　花押
　弁殿尼御前に申させ給へ

　しげければとヾむ。弁殿に申す。大師講ををこ（行）なうべし。
　大師とてまいらせて候。三郎左衛門尉殿に候文（ふみ）のなかに、涅槃経の後分（ごぶん）二巻、文句五の本末、授決集（じゅけつしゅう）の抄の上巻等、御随身あるべし。

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※1　日昭の母、妙一尼と思われる。大勢が退転する中、女人の身でありながら信心を貫いたことを称賛。

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※2　大智度論　巻１５

①欲(欲望)
②憂愁(憂いや悲しみ)
③飢渇(飢えと渇き)
④渇愛(五欲への執着)
⑤睡眠
⑥怖畏(恐れ)
⑦疑悔(疑いや後悔)
⑧瞋恚(怒り)
⑨利養虚称(名利にとらわれること)
⑩自高蔑人(自らを誇り、人を見下すこと)となっています。

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破十軍修仏道記
　　　　　　　　　　　　　比叡山大師　口決

　欲は是れ、汝が初軍なり。
謂ゆる大乗の菩薩は、善知識を得ずして俗塵の名に居し、欲軍に縛せらる。
是に於いて、行者は僅かに善知識を得て、即ち無上道心を発し、俗塵の友を離れ、山林の中に入りて仏法を修行す。
故に、此の欲軍を破すなり。
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　憂愁を第二と為す。
謂ゆる行者は、仏道を修行するに一切の資具に堪えざるに依りて、而も即ち思いて云くに
「父母・妻子・親族の中には、衣食を具足す。那んぞ、急かに山林に入りて物毎に貧乏なるや」と。
昼夜に憂愁す。

→　勤行・唱題・折伏・寺院参詣・御登山・会合などなど、なんて面倒くさい、かったるいんだ、、、、、

此の軍に縛せらるるとき、行者は忍耐して云くに
「諸仏・菩薩は親愛の俗塵を捨て、而も山林の中に入りて仏道を修行して正覚を成じ畢りぬ。
我れ、何ぞ之れを破せざらんや」と。
即ち、憂愁を破して精進修行する時、此の憂愁の軍を破すなり。

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　飢渇を第三と為す。
謂ゆる行者は憂愁の軍を破して、以て仏道を修行する時、飢渇に迫らる。
行者は憶いて云くに「親愛の中には、衣食飽足せり。何ぞ、忽ちに山林に入りて、飢渇に迫らるや」と。

→　金の貧乏・時間の貧乏・体力の貧乏・・・・　願いはそう簡単には叶わないから、常に不足を感じている。

即ち、此の軍に縛せられるとき、行者は忍辱して云くに
「三世の諸仏は飢渇を忍辱し、難行苦行して仏道を得玉えり。何為ぞ、仏道に此の苦を忍びざらんや」と。

→　大聖人様を想え！偲べ！

精進修行して、即ち此の飢渇の軍を破すなり。

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　竭愛を第四と為す。
謂ゆる行者は即ち飢渇の軍を破して精進し、修行する時、親族・檀王は資具を備えて助け来たりて、為に之れを供養す。
行者は即ち飽くまで酒飯を食して、昼夜に俗塵の境を竭愛す。
此の軍に縛せられば、行者は当に忍辱すべし。
云くに「俗塵の境は前賢、後聖は皆な共に厭う所なり。苟くも仏道に入りて、我れ何ぞ然も愛す可きや」と。
頭を叩いて涕泣し、勤めて身心を励まし、仏法を加行す。
故に、竭愛の軍を破すなり。
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睡眠を第五と為す。
謂ゆる行者は、竭愛の軍を破し、即ち道場に入りて仏法を勤行す。
身意は懶惰にして、飲食を飽足し、昼夜に睡眠し、都て道心無し。即便ち、此の軍に繋縛せらる。
行者は忍辱して云くに
「睡眠は都て是れ潤生の煩悩にして、凡夫の好む所なり。聖人は之れを厭う。仏道を求むるの人、如何ぞ、之れに随わん」と。
強いて道心を発し、精進し、修行して、即ち此の軍を破すなり。
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　怖畏を第六と為す。
謂ゆる行者は睡眠の軍を破して、夙夜に精進するに、不鬼の株を鬼と謂い、非●の縄を●と謂いて（※●＝蛇の類か？）、身心に怖畏し、都て道心無きは、此の軍に縛せらる。
行者は忍辱して、凡そ遍計等の怖畏は、凡夫誑惑の心にして、聖人の厭う所なり。
故に「昔、諸仏は仏法を修行し、四魔の軍を破して無上道を得たり。我れ、何ぞ怖畏す可きや」と。
即便ち、無上道心を発し、仏法を修行して、此の軍を破すなり。
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　疑悔を第七と為す。
謂ゆる行者は怖畏の軍を破して精進し修行するに、根鈍にして障りは重きに由りて、仏法の気分は甚だ之れを得難し。
即ち、憶念して云くに「聖教の中、仏法の霊験を広く之れを説く。我れ精進すと雖も、而も何の仏法の験かある。都て之れを得ず」と。
故に、疑悔す。

→　やってもやっても功徳を感じられない。御本尊を、日蓮正宗を、信心を疑う。

行者は、即ち忍辱して云くに
「聖教の中に、根は利にして、障りの重き人、障り無きも、根の鈍なる人は、仏法の気分は猶故は（※「故は」は余分か？）、得難しと説けり。
何に況んや、我が根は鈍にして、障りは重きなり。何ぞ、輙（たやす）く得可きや」と。
精進し、修行するが故に疑悔を破すなり。
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　瞋恚を第八と為す。
謂ゆる行者は疑悔の軍を破して精進し、修行する時、任運（※運命に任せる？）の瞋を興す。
順理（※理にしたがう？）の瞋は、欝茂（※草が生い茂る事）として都て道心無し。瞋恚の軍に繋縛せらる。
行者は即便ち、忍辱して破すべし。
善く順忍・寂滅忍・無生忍に随いて精進し、修行するが故に、瞋恚の軍を破すなり。
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　利養を虚しく受くるを第九と為す。
謂ゆる行者は、種々の瞋を破して三種の忍を行ずる時、多く高徳の檀王を得る。
衣食を具足し、道俗も圍繞す。

→　折伏成就した時など、周囲に讃嘆される。

此の軍に縛せらるに、行者は忍びて云くに
「利養・虚名は、正直の重障なり。我・我所を離れずして、而も仏法を修せん」と。
即ち、利養を喜捨し、徒衆を遠離して独一に精進し、修行す。
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　自ら驕慢の人を第十と為す。
行者は第九の軍を破して精進し、修行する時、驕慢の心を興発す。
即ち、念じて云くに
「我れ利養・恭敬を棄捨し、亦た徒衆眷属を遠離し、独一に真実の道を修行すること、我の如く人は無し」と。
自ら驕慢の人は、此の軍に繋縛せらるなり。
行者は忍辱して云くに
「自ら驕慢の人は、成仏の重き障なり。故に、常不軽菩薩は仏性を礼敬し、四安楽の行を行じて仏道を成ず。
故に今、自ら驕慢の心を破して忍辱の地に住し、柔和善順にして、而も卒暴ならず。
心も亦た、驚かずして即ち仏性を礼し、四安楽行を行ず可し」と。

→　更に、更に折伏に邁進するぞ！

故に、自ら驕慢の軍を破すなり。
即ち、一乗の行を修して、六箇の功徳を得るは、髻中の明珠を賜わらん、と云々。

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魔軍の棟梁である第六天の魔王が率いる十軍。

十軍は、種々の煩悩を十種に分類したもの
南インドの論師・竜樹の「大智度論」

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　第一の『欲』とは、自分の欲望に振り回されて、信心が破られていくこと。
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　第二の『憂愁』は、心配や悲しみに心が奪われ、信心に励めない状態。
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　第三の『飢渇』は、飢えと渇きで、食べる物も、飲む物もなくて、何もできないこと。
活動しようにも、空腹で体を動かす気力もない。交通費もない。だから、やめてしまおうという心理か。
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　第四の『渇愛』は、五欲といって、眼、耳、鼻、舌、身の五官を通して起こる、五つの欲望。
美しいものに心を奪われたり、よい音色、よい香り、美味、肌触りのよい衣服などを欲する心。
それらを得ることに汲々として、信心を捨ててしまうこと
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　「第五の『睡眠』は、睡魔。
たとえば“唱題しよう”“御書を学ぼう”とすると、眠気が襲ってくる
釈尊も、悟りを得るまでのなかで、この睡魔と懸命に戦っていた。
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　睡魔に襲われないようにするには、規則正しい生活を確立し、十分な睡眠を心がけること。
さらに、熟睡できるように工夫すること。
寝不足であれば、眠くなって当然。
また、眠気を感じたら、冷水で顔を洗うなどの工夫も必要。
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　第六の『怖畏』は、恐れること。
　信心することによって、周囲の人から奇異な目で見られたり、仲間はずれにされるかもしれない。
時には、迫害され、命に及ぶこともあるかもしれない。
　そうなることを恐れ、信心から離れたり、信心を後退させてしまうことが、これにあたる。
結局、臆病。
　大聖人は『日蓮が弟子等は臆病にては叶うべからず』と仰せ。
信心を磨き、一生成仏していくための要諦は、勇気をもつこと。
入信するにも勇気。
折伏するにも勇気。
宿命に立ち向かうにも勇気。
信心とは、勇気
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　第七の『疑悔』は、疑いや後悔。
せっかく信心することができたのに、御本尊を疑い、日蓮正宗を疑い、難が競い起これば、“信心などしなければよかった”と悔やむ。
暗い、じめじめとした心
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　第八の『瞋恚』は、怒り。
『折伏をしましょう』と指導されると、“よけいなお世話だ”と憤り、怨嫉。
また、御住職や信心の先輩が、本人のためを思い、御書に照らして信心の誤りを指摘すると、腹を立て、恨む。そうした心の作用」

　「怒りの心は、それ自体が悪いというのではない。
悪事に対して怒りを感じることは必要。
邪悪への怒りがなくなれば、正義もなくなってしまう。
怒り、腹を立てた結果、信心を後退させてしまうことが問題。

　たとえば、いい加減で、周囲に迷惑をかけてばかりいる、問題の多い先輩法華講員がいたとする。
その姿を見て憤りを感じる。
それは当然。
しかし、〝だから、私は活動をやらない。お寺に行かない。会合にも出ない。折伏もしない。〟ということになってしまう。
それが、『瞋恚』という魔に敗れた姿。
　自分が、一生成仏をめざして仏道修行していくことと、先輩法華講員がだらしないこととは、本来、別の問題。
それを一緒にして、自分の信心の後退を正当化しようとする心こそ、克服すべき問題。
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　第九の『利養虚称』、『利養』は、利を貪ること。『虚称』は、虚名にとらわれること。
名聞名利を追い求め、信心を軽んじ、成仏への道を踏み外してしまう生き方。

　利欲に翻弄されればされるほど、心は貧しくなり、すさんでいく。
　『虚称』を求めても、名誉や地位は、永遠の生命観から見れば、うたかたの夢のようなもの。
それに心を奪われて、信心を忘れるのは愚か。

みんなが褒め讃えてくれれば、活動にも参加するが、機嫌を取ってくれる人がいないと、仏道修行を怠ってしまう。
罪障消滅、宿命転換、境涯変革できず、微々たる福運も尽きていく。
そして、結局は、誰からも相手にされなくなってしまう。最後は惨め。
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　第十の『自高蔑人』
　自ら驕り高ぶり、人を卑しむこと。慢心。
慢心になると、誰の言うことも聞かず、信心の組織にしっかりついて、謙虚に仏法を学ぶことができなくなる。
また、周囲も次第に敬遠し、誤りを指摘してくれる人もいなくなってしまう。

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スッタニパータ（原始仏教）　釈尊修行中の悪魔との問答

1　欲望
2　嫌悪
3　飢渇
4　妄執
5　ものうさ・睡眠
6　恐怖
7　疑惑
8　みせかけと、強情（頑迷）
誤って得られた利得と名声
自己をほめたたえて他人を軽蔑すること

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慢　まん

他人と比べて、自分を誇ったり過剰評価して、思い上がる心を慢といいます。
家柄、財産、地位、知識、能力、容姿など、比べることの出来る事柄では、何にでも起こりえる煩悩のひとつです。

心の状態で、七つに分けたものを七慢といいます。
八慢、九慢、という分類もあります。我慢はその中のひとつです。
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　七慢　しちまん

1.慢まん　　自分より劣っている人に対しては自分が勝っている、とうぬぼれ、同等の人には、自分と等しいと心を高ぶらせる。

2.過慢かまん　　自分と同等の人に対して自分が勝っているとし、自分以上の人は自分と同等とする。

3.慢過慢まんかまん　　勝っている人を見て、自分はさらに勝っている、とうぬぼれる。

4.我慢がまん　　自負心が強く、自分本位。

5.増上慢ぞうじょうまん　　悟っていないのに悟ったと思い、得ていないのに得たと思い、おごり高ぶる。

6.卑慢ひまん　　非常に勝れている人を見て、自分は少し劣っている、と思う。

7.邪慢じゃまん　　間違った行いをしても、正しいことをしたと言い張り、徳が無いのに有ると思う。

以上は、阿毘達磨品類足論あびだつまほんるいそくろんと言うお経の第一巻の辯五事品から。お経により七慢には色々な呼び方があり、順番も異なります。
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七慢

七種の慢のこと。自己を実際以上に高く見せようとすることを慢という．

慢　劣れる他人に対して自分が勝れると思い、等しい他人に等しいと思うこと

過慢　他人に等しいのに自分が勝れると思い、他人が勝れているのに自分と等しいと思うこと

慢過慢　他人が勝れるのに自分がより勝れると思うこと

我慢　自分勝手な意見に執着すること

増上慢　法理などをいまだ得ていないのに得たと思うこと

卑慢　他人の方がはるかに勝れるのに、自分は少ししか劣っていないとすること

邪慢　自分は徳がないのに徳のあるように見せること

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▲慈悲を観じて嫉妬（しっと）を治す。一代聖教大意　　　正嘉二年二月一四日　　三七歳　85

▲修羅道とは、止観の一に云はく「若し其の心念々に常に彼に勝らんことを欲し、耐へざれば人を下し他を軽しめ己を珍ぶこと鵄の高く飛びて視下ろすが如し。而も外には仁・義・礼・智・信を揚げて下品の善心を起こし阿修羅の道を行ずるなり」（十法界明因果抄　209）

▲只須く汝仏にならんと思はゞ、慢のはたほこをたをし、忿りの杖をすてゝ偏に一乗に帰すべし。名聞名利は今生のかざり、我慢偏執は後生のほだしなり。嗚呼、恥づべし恥づべし、恐るべし恐るべし。（持妙法華問答抄　296）

●　上根（じょうこん）に望めても卑下すべからず。下根（げこん）を捨てざるは本懐（ほんがい）なり。下根に望めても・慢（きょうまん）ならざれ。上根もも（漏）るゝ事あり、心をいたさざるが故に。（持妙法華問答抄　弘長三年　四二歳　297）

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今日蓮が弟子等も亦是くの如し。或は信じ或は伏し、或は随ひ或は従ふ。但名のみ之を仮りて心中に染まらざる信心薄き者は、設ひ千劫をば経ずとも或は一無間（いちむけん）或は二無間（にむけん）乃至十百無間疑ひ無からん者か。是を免（まぬか）れんと欲せば各薬王（やくおう）・楽法（ぎょうぼう）の如く臂（ひじ）を焼き皮を剥（は）ぎ、雪山（せっせん）・国王等の如く身を投げ心を仕（つか）へよ。若し爾（しか）らずんば五体を地に投げ遍身に汗を流せ。若し爾らずんば珍宝を以て仏前に積め。若し爾らずんば奴婢（ぬひ）となって持者に奉（つか）へよ。若し爾らずんば等云云。四悉檀を以て時に適（かな）ふのみ。我が弟子等の中にも信心薄淡（うす）き者は臨終の時阿鼻獄（あびごく）の相を現ずべし。其の時我を恨むべからず等云云。（顕立正意抄　文永一一年一二月二五日　五三歳　751）

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魚の子は多けれども魚となるは少なく、菴羅樹（あんらじゅ）（※４）の花は多くさけども菓（このみ）になるは少なし。人も又此くの如し。菩提心を発（お）こす人は多けれども退せずして実（まこと）の道に入る者は少なし。都（すべ）て凡夫の菩提心は多く悪縁にたぼらかされ、事にふれて移りやすき物なり。鎧（よろい）を著たる兵者（つわもの）は多けれども、戦（いくさ）に恐れをなさヾるは少なきが如し。(松野殿御返事建治二年一二月九日五五歳 1048)

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※3　娑婆世界。現実世界。六道の凡夫と四聖が同居している国土。凡聖同居土

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※４　菴羅樹

花梨（カリン）・・バラ科と思える。
大辞林によれば、
「あんらおん［―をん］【菴羅園】
インド、ガンジス川中流域のバイシャーリー市郊外にあるマンゴー樹の園林。釈迦はここで維摩(ゆいま)経を説いたという。菴没羅園(あんもらおん)。菴摩羅樹園(あんまらじゆおん)。」と

マンゴーなのか花梨なのか？